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ジンブロ|住吉甚一郎のブログ

マジック

2012年10月24日 | Comment: 0

マジック担当になった。しかも、三人選出されそのトリを務めることになった。
ビッグバード。
先生とは残酷な仕打ちをする生き物だ。
クラスの催し物だったが、一人必ず一つ何かをやらなければならなく、お題の割り当てがクジ。見事マジックを引いたわけだ。順番はなんとなくで、その年の運動会でスイミー役を務めた私がトリに選ばれた。
マジックなんてしたことがない。うーむマズイ。
つまり、マズィック。
ウェナイ ワズ 4年生。
こんな困難に直面した時に、頼りにするのはやはり母親!
ランドセルはからったままで、マジックを伝授して下さい!と頼む。
ちなみに、鹿児島ではリュクサック等を背負う行為は「からう」と言う。

「マジック教えて!」
すると母はとても強い調子でこう言った。
「お花を摘みにいきましょ~うッ!!」
言うと同時に、するするするっと右手を顔の前に持ってきて、
グバムッ!と鼻をつまんだ。

「これをやりなさい!」
と、揺るぎない調子で言った。
スゲぇ。そう思った。
マジック+ユーモア!こりゃあ明日ドッカンさせちまうぞ。

「お花を摘みにいきましょ~うッ!」
グバムッ!
グバムッ!
グバムッ!
摘んで摘んで練習を重ねた。その過程で、見栄えを良くするためにハンカチを使うギミックを取り入れる事にした。
いやぁー、パーペキ。

そして当日。

前の2人は、玉増やしたり、カード当てたりと市販グッズ系だ。しかも、1人で3ネタくらいやるなど、予想外にボリューミーで、しかも結構盛り上がった。
おいおい、そんなにやるのかよ1ネタしかないぞ僕は。
と、ヒヨリ気味になりつつ自分の番。

ハンカチの裏と表を見せ、
「ピロピロピロ~!お花を摘みにいきましょ~うッ!」
グバムッ!と鼻をつまむ。
そして、そっと左手でハンカチを添える。
Fin.

ん?
終わってんだけど、どうした?

予想と違い、静まり返っている。
皆を見渡して見ると、心の声がハッキリと聞こえた。

「からの?」

ま、マズィック・・・。
花と鼻という洒落た部分を理解していない。
何かが消えるか、もしくは出てくると思って期待に満ちた顔でこっち見ている。
キューーーンと血の気が引くのがわかる。
何かしなければッ!
ワサッワサッ
ワサッワサッ
顔の前で手を動かす。
ワサッワサッ
縦横無尽に
ワサッワサッ
とにかく、手を早く動かし、
ワサッワサッ
もっと早く動かし、
ワサッワサッ
ワサッワサッ
千手観音のごとし!
幻惑する動きを始めていた。
おそらく、僕の手は無数に見えているはずだッ。
さらに早く、もっと早く!
ワサッワサッ
ワサッワサッ
ワサッワサッ
ワサッワサッ
今だ!
「ピロピロピロ~!フラワー!」
叫ぶと同時にバッと両手を広げる。そして、両掌をゆっくりと皆に見せる。

ハンカチが・・・消えたッ!
どふおおおおお!
驚きに揺れる教室。ハンカチは、変な動きで惑わしつつ、ドサクサに紛れて後ろに捨てた。

そうやって僕は、なんとか危機を乗り越えた。これが、人生初のアドリブだ。

そして、今ならはっきり分かる。
「母さん、あれはマジックじゃぁないね。」

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